人生で何が最も楽しいかと聞かれれば、私の場合はフライフィッシングになる。
フライフィッシングは、魚を釣ることそのものよりも、その前後を含めた一連のプロセスを楽しむ遊のように思う。
まず地図を眺め、良さそうな川を探す。
現地へ下見に行き、その川を知る人々に話を聞く。
宿に戻ると、得た情報を整理する。
自分の滞在時間、手持ちのロッド、季節、川の状態を考えながら、「今日は釣れるかもしれない」という仮説を組み立てる。
可能性があると判断すれば遊魚券を買い、実際に川へ入る。
釣果を振り返り、その日の経験をもとに毛鉤を巻く。
振り返れば、この営みは私の仕事によく似ている。
地域を歩き、人に話を聞き、記録し、編集し、仮説を立てる。
しかし決定的に違うのは、川には人間の思惑を超えた要素があまりにも多いことだ。
天候、水量、虫の羽化、魚の気配。
こちらは準備を整えることしかできない。
あとは川という偶然のシステムに、半日ほど遊んでもらうだけのように思う。